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泉美木蘭
2016.6.18 19:06

日本国内の貧困率に敏感になれない人へ

曽野綾子のように、地球の絶対的貧困率を取り上げて

「アフリカでは、栄養失調で十分に成長できなかったり、餓死したり、

病気でばたばた死んでいく子供ばかりなのだ、それが本当の貧困だ」


なんて言ってしまう人はいるけれど、
私は、
日本人は日本国内の相対的貧困率にもっと敏感でなければならない
と強く思います。
それは、「弱者がかわいそう」という
単なるヒューマニズムではありません。

7.56 6.84 6.56 6.26 6.03 5.97 5.93 5.86

これ、何の数字かわかりますか?
世界の出生率トップ8の国で、一人の女性が一生の間に産む子供の数です。

1位 ニジェール…7.56人
2位 マリ…6.84

3位 ソマリア…6.56
4位 チャド…6.26
5位 
ブルンジ…6.03
6位 ナイジェリア…5.97
7位 コンゴ…5.93
8位 ウガンダ…5.86


ぜんぶ、アフリカの最貧国です。

絶対貧困者ばかりのはずのアフリカは、世界で最も出生率が高いので、
人口が減りません。
先進国とは違って、生活レベルも医療レベルも低く、衛生環境も劣悪で、
たくさん死ぬから、たくさん産むのです。
出生率世界トップ8の国の平均寿命は、どこも尻から数えたほうが早い短さです。

ニジェール…59歳 マリ…57歳 ソマリア…54歳 チャド…51歳
ブルンジ…56歳 ナイジェリア…55歳 コンゴ…59歳 ウガンダ…59歳

ひたすら種の保存のために子供を産むのです。
そして、生き残って育った児童は、働かなければなりません。
教育レベルも低く、衛生面の知識も、避妊の知識も、ありません。


一方、日本はぶっちぎりで平均寿命世界ナンバーワン(84歳)です。

しかし、現代の日本では、貧困状態は、アフリカの失敗国家とは違って、
出生率の歯車を逆回転させます。

貧困率が上がると、出生率は下がると予測されるのです。

以前、ライジングでも書きましたが、誰しも結婚して、子供を2人以上、
できれば3人産めたらいいなと希望しています。
しかし、現代の日本は、戦後の日本とも、アフリカの最貧国とも違って、
生活するにも、子育てにも、異常に金のかかる国です。

《自分たちの所得では、とてもじゃないけど、子供を育てられない。
夫婦2人で普通の暮らしを保っていたけど、子供を2人も産んだら、
貧困家庭に転落してしまう・・・》

こういったケースがたくさん存在するのです。

さらに、子供どころか、自分が暮らしていくための稼ぎを得るだけでも
精いっぱいで、結婚もままならないという人が、どんどん増えています。
そういった人に、

「アフリカを見よ! 路上生活をして、子供を6人生めばいい。
5人餓死しても、1人ぐらいは生き残るから。
男の子が生き残ったらカカオ農園に売ればいいし、
女の子なら売春婦として働いてもらって仕送りさせたらいい」

とでも言うつもりですか?
アフリカと比べて日本は裕福だから、格差はないなどと言う人は、
非正規社員として喘ぎ、給料が上がらず、結婚できないどころか、
「生活が苦しい」と訴える若者に、そう言ったらどうですか?
殴られるからキャッチャーマスクかぶって言ったほうがいいですよ。

今の日本の状況では、このまま貧困率が上がると、出生率は
ますます下がると予想するのが普通の感覚です。
子供が生まれなくなれば、日本という国の未来はありません。
アフリカの失敗国家に比べて、高度な文明、豊かな経済、発達した医療、
福祉制度があったとしても、
日本には、日本の貧困があり、その貧困を軽視することは、
国家の重大な危機につながっています。


日本人は、日本国内の相対的貧困率にもっと敏感になるべき時だと、
私は思います。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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